【中国・深圳】中国進出のその後、現地法人へインタビュー
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ビヨンドの中国オフィス「必友得科技(深圳)有限公司」は、2024年2月19日より、中国で本格的に業務を開始しております。
今回は、必友得科技(深圳)有限公司の大原さんと高城さんの2名に、インタビューをおこないました。
◆ Interviewer:小松 あさか(ビヨンド 広報)
中国市場へ参入したキッカケや、中国での現在の取り組みについて教えてください
大原:2018年位ぐらいに、Alibaba Cloud などの中国系のサービスが日本にどんどん参入し始めて、中国のITサービスに勢いを感じたときに、ビヨンドも中国の市場に進出を検討し出したのがキッカケです。
進出準備の中でまずやったことは、中国の様々な地域に視察に行きました。現地の中国企業や中国に進出している同じような日系企業にも、面談や打ち合わせをおこなっていただきながらリサーチを続け、同時に進出の検討も重ねながら、中国での現地法人の開設方法や開設準備も少しずつ進めてきました。
しかし、その最中に、新型コロナウイルスが流行して中国に行けなくなり、ビヨンドとしても中国でのリサーチや交流が停滞する時期もありましたが、そのようなときでも少しでも前に進めようという気持ちで、インターネットでの情報収集やパートナー企業を探したりしていました。
高城:私たちがいる深圳や広東省のエリアは、製造業のお客様が非常に多い反面、自分たちと同じような、サーバーインフラの事業をメインで展開してるIT企業は少ない印象です。そのようなフィールドに、ビヨンドのサービスをどのように展開するかを考えたり、どのようなニーズがあるかを、自分達の中でテーマだと思い活動しています。
---中国オフィスの事業は、日本の延長線の位置付けですか
大原:まずビヨンドは、日本・中国・カナダの3ヶ国で、AWS や Alibaba Cloud などのクラウドやサーバーの構築・運用を代行する「MSP」と呼ばれる事業を展開しています。
この中国オフィスの事業も、日本の延長線となる事業ではありますが、「日本でやっていけてるから、中国や海外でも同じようにやっていけるか?」と言われると、それはまた別の話です。
中国や海外の文化やビジネスのあり方に合わせたり、どのようなサービスが求められているかなどの、ローカライズは必要だと感じているので、その部分で試行錯誤を繰り返しています。
日本と中国における、ビジネスの違いを感じる部分を教えてください
大原:日本だと初めてお逢いした際に、お客様と名刺交換をおこない、実際に挨拶行って情報交換をしながら、また何かあればのような形で、顔繋ぎをする仕事の仕方がとても多くあります。
しかし、中国では知り合いの会社から買ったり取引するなどの紹介文化の傾向が強く、そういった商習慣の違いもあり難しさを感じます。また、ITサービスやアプリの普及が進んでいるため、大半のことは WeChat やそのミニプログラムを利用して完結できる部分などは、とても進んでいると感じる部分でもあり、日本との大きな違いだと思います。
---中国では、WeChat や SNS などが重要なのですか
大原:WeChat だけでなく、スマートフォンがとても大事な生命線ですね。実際に生活面でもスマートフォンが無いと何もできません。ビジネス面においても、WeChat でのやり取りが基本になっており、9割以上は WeChat で完結します。そもそも紙の名刺を持っていない方も多く、ほとんどが WeChat で連絡先を交換するような流れで挨拶が始まります。
---紙の名刺はあまり使われないのでしょうか
大原:紙の名刺も一応あるのですが、日本のように重要視されていない気がします。また、WeChat で連絡先を交換したときに、名刺データを送ったり、その名刺データも WeChat のミニプログラムアプリで作成できるので、その上で紙の名刺を交換することはほとんどありません。
高城:私が日本にいるときに、中国と日本のビジネスの違いで言われていたもので、印象に残っていたのは、「スピード感」です。中国に行く前から、中国では連絡・対応がとても早いなどと聞いていましたが、実際に仕事をしてみると、本当に連絡や対応がとても早く機敏だなという印象を持ちました。スピード感のイメージはしていましたが、比べるものが無いのであくまでイメージでしかなかったです。普段の仕事でもそうですが、自分がやり取りする方々は、皆さん本当に対応が早いです。
例えば、クオリティの部分で言うと、日本人はできるだけ「100% に近い状態でお客様に提出しよう」のような感覚がベースにあると思います。その一方で中国では、「50%~60% の完成度でお客様に提出してみて、そこから修正を掛けながら 80% に、さらに何回かやり取りしながら 100% にする」という流れで仕事をおこなっている感じがします。
スピードの意味で言うと確かに早い、物事がなんでも進んでいる感じもあるかもしれないです。日本の商習慣や仕事の進め方を考えると、結構な違いがある感じたところです。
---実際に中国へ行ったからこそ感じる部分だったのですか
高城:そうですね。日本にいながらも YouTube や Google 検索などで調べたり、友人から話を聞くことでも知ることはできます。私たちが知れたというのは、少なくとも実際に中国に住み、仕事して経験したことが背景だからこそ本当の意味で知れた気がします。
---そうなると、スピード感がない場合、相手にされないのでしょうか
高城:可能性としてはあると思います。例えば、私たちの常識をベースに、「これがお客様にとってベストだろう」と予測して物事を進めたとします。
ただ、自分たちが定義しているベストが、必ずしもお客様が思っているベストとは違うということを理解していないと、スピード感としての差が表れてくるのではないでしょうか。そのあたりは、その国の文化にある程度自分を合わせていくアクションが必要だと考えてます。
中国のクラウド市場について、日本市場とのギャップについて教えてください
大原:日本であれば AWS が大きくシェアを占め、その次に Azure と GCP が続くと思いますが、中国は Alibaba Cloud のシェアが大きく、その次に、Huawei Cloud や Tencent Cloud などのクラウドサービスが続きます。中国でも AWS や Azure はありますが、日本のように圧倒的に大きなシェアがあるほどでは無さそうです。
---中国でクラウドと言えば、Alibaba Cloud のイメージですか
大原:Alibaba Cloud だけではなく、Huawei Cloud や Tencent Cloud などのクラウド、他には中国地場のデータセンター事業者が提供するクラウドやホスティングがあったりと、中国のお客様もニーズに合わせてサーバー環境を使い分けています。これは人のイメージによって個人差があるような気がするので、一概には言えないところです。
---AWS の中国版を取り扱うことはありますか
大原:ビヨンドはマルチクラウドに対応しており、AWS も Alibaba Cloud などを用いた、様々なクラウドプラットフォームを用いたインフラの構築・運用を手掛けています。これはビヨンドの中国オフィスでも同じ体制で、中国のお客様の要望に合わせたクラウドで構築・運用するといった具合ですので、どちらでも問題ないですね。
また、AWS の中国版は、中国現地法人の企業のみがアカウント開設・利用できるので、中国に現地法人が無い日本企業は使いたくても使えないです。その点、ビヨンドは中国現地法人を設立し、AWS の中国版も利用できるようになったので、AWS 中国版の技術サポートもできるようになりました。
中国での MSP の技術・企業と日本の異なる部分を教えてください
高城:以前、中国の東莞で開かれた、Huawei Cloud のパートナーイベント(Huawei Cloud APAC Partner Connection Summit)に参加させていただき、ビヨンドと同じようなパートナー企業の方々とお話させていただいた際、業界を絞って MSP のようなサービス提供を手掛けているケースが多い印象でした。
例えば、フィンテック や AI関連 の分野・業界だけに特化して、インフラの構築や運用までをおこなう、というような話を聞きました。たしかに一部の分野・業界に特化していれば、細かい部分は違えど、似たような技術を流用できたりと、社内にナレッジが溜まりやすい環境になるので、社内として管理や運用が効率化できていそうです。
現在、ビヨンドの中国オフィスでは、特に業界を絞ったりはしておらず、お客様の案件やプロジェクト次第で、営業とエンジニアのチームが協力して進めています。しかし他の海外ベンダーでは、ある業界だけに絞って MSP を展開するサービスの打ち出し方をしている企業様が意外と多い印象だったので、それがビヨンドとは違うところですね。
確かに、ターゲットを業界・分野を絞ることで、その他社ベンダーとも完全なる競合になることは少ないのかもしれませんし、競合との差別化にも繋がると感じました。
ビヨンドの技術やサービスは、中国ではどのような反応ですか
大原:現在は、日系企業のお客様をメインに案件・プロジェクトをおこなっているので、ビヨンドの技術やサービスをご紹介したときに、中国現地法人のシステムの現状について、課題を感じているというお話はよく聞きます。
また、「日本ではある程度、AWS を使いこなせているが、Alibaba Cloud などの中国系クラウドことはよく分からない」というようなこともあり、これらのような課題に、柔軟に対応できる日系のITベンダーは意外と少ないかもしれません。このような場合に直面したとき、「中国系のクラウドの技術が分かる日系ITベンダーに依頼できたら」と、潜在的なお悩みを抱えている日系企業の方々はとても多いのではないかと感じます。
高城:ビヨンドは技術的なサポートはもちろんですが、サーバーの技術に造詣があるエンジニアが、24時間365日有人対応しているのは、とても大きな特徴だと思います。
これは、中国だけに限った話ではないかもしれませんが、様々な方々とお話していると、24時間365日対応と言いつつ、「受付自体は24時間対応だが、実際の作業対応は次の営業日になる」「サーバーの運用業務そのものを、外部の別会社へ委託している」などの話もよく耳にします。
それに対して、ビヨンドは日本でもそうですが、自社のエンジニアがお客様とやり取りをしながら、24時間365日の技術サポートを提供できる部分は、お客様から好評価をいただけることが多いです。そのあたりは中国でサービス展開してても、良い反応をいただけています。
---日本のサービスの強みが、中国でも響いているのでしょうか
高城:そうですね。価格競争が激しい中国の市場ですが、逆にビヨンドはこの優位性があるので、サービス価値の根拠を示せれる強みだと感じます。
---中国は価格の部分は、特に大事なのでしょうか
高城:これは特に、ITサービスに限った話ではなく、どの分野でも最終的には価格競争になっていると思います。サービスを受ける、享受する側はそれでも良いかもしれませんが、サービスを提供する側としては、その価格をどう捉えて提供していくのかが、非常に重要な要素です。
必友得科技だからできること、強みについて教えてください
高城:まずは、中国に現地法人があることは本当に大きいことだと考えており、実際の駐在体験を通して、中国現地の情報を生身で吸収していくので、日々知識は増えていきます。ニュースやネットだけの何かしらで拾った情報だけでなく、優位性のある情報を届けられることが強みでもあります。
実際に中国現地に居ないと、状況が分からないことも多いので、そこに対して「これはこうやって進めます」といったアプローチを中国から発信することで、お客様の立場に置き換えたときに、1つのメリットになるかなと思います。
---お客様にとっては安心材料になりそうですね
高城:そうですね。安心してもらえる一つの材料になってくれたら嬉しいです。
大原:アジアの中でも技術革新地と呼ばれる深圳というロケーションに、中国オフィスの本拠地を構えているのが特徴で、様々な新しい技術やアイデアをすぐにキャッチアップすることができます。
他の日系のITベンダーですと、日本と地理的に近い、上海や大連など本拠地を構えていることが多いですが、深圳はハードウェア系の会社が多いことも影響しているのか、ビヨンドのようなサーバーやソフトウェア系のサービスを扱う、日系のITベンダーは少ないように感じるので、そこにもビヨンドの優位性が見込めます。
広東省で困っている日系企業のITサポートを地域密着型でおこなったり、香港エリアも近いので、ビジネスに幅を持たせてやっていけるのが、深圳のロケーションの良さだと感じています。
あと、中国系クラウドの MSP に加えて、Webシステム開発や中国ホームページ制作、WeChat ミニプログラム開発などを手掛けることも可能です。ビヨンドの日本本社と密に連携しながら、案件・プロジェクトを進めることができるので、これもお客様にとって安心できる材料となっています。
---中国に現地法人ができたからこそ、取り入れたものはありますか
大原:はい、中国で現地法人を開設したこともそうですが、実際に中国で仕事・生活をしてからでないと、気付かなかったことも沢山ありました。特にインターネットの問題とかは非常に困った部分があり、自分たちの体験があったからこそ、日本や中国・海外で利用できるSIMサービスも開始することもできました。
「自分たちが困ったものは、世の中でもニーズがある」と感じ、考えついたサービスでもありますし、実際に自分達だけの利用だけでなく、ビヨンドの他メンバーでも海外旅行や出張の際には、このサービスを利用してもらっています。
◆ グローバル eSIM サービス「ビヨンドSIM」
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中国のITベンダーとは、どのように差別化を図っていますか
大原:お客様のシステムやアプリケーションが、24時間365日絶え間なく安定稼働するようにサポートし、お客様のビジネスを支え続けるのがビヨンドの MSP です。
しかし、24時間365日、クオリティの高い技術サポートを維持し続けるためには、どうしても「夜間対応」という壁があるので、その国の単体だけでは、常時安定した技術サポートを提供していくのは難しいと考えます。
ビヨンドの場合は、ビヨンドの完全子会社として北米(カナダ)にも拠点があるので、昼夜逆転の時差を活かした、高いクオリティの技術サポートを提供できるのが差別化になっています。この運用体制を確立しているITベンダーは、中国だけに関わらず、日本国内でも少ないと思います。
高城:中国の日系企業のお客様に対して特にアピールしたいことは、もちろん言語面もそうですが、日本でやっているときの感覚に近い状態、日本と変わらないクオリティでサービスを提供できることです。ある意味、日本らしさを出して、お客様と一緒に仕事をしていくことが、中国現地のITベンダーとの差別化になる部分です。
必友得科技の今後の戦略・事業展開について教えてください
大原:「必友得科技であれば、このサービス」という代名詞となるサービスを開発していきます。それに加えて、必友得科技で開発したサービスを、日本へ逆輸入して日本市場で展開するのも面白いですね。あとは、中国国内での市場拡大であったり、深圳を拠点にしながら東南アジアなどの国々にも、サービスを提供していきたいですね。
---中国にとどまらないとのことですね
大原:深圳は東南アジアの各国とも、比較的にアクセスしやすい環境にあるので、そのような国々・地域を巻き込んだビジネス連携も、今後は視野には入れています。
経済の発展が著しい東南アジアでは、中国とまったく同じ形とまではいかずとも、通じるものもあるはずなので、日本人にとって文化圏や時差などを考慮したとき、他の国々と比べたらまだ展開しやすい方ではないかと思います。
あと、現在日本では円安の影響もあってか、海外観光客のインバウンドがかなり増えていますよね。今後のためにも、日中を掛け合わせたインバウンド集客のための、日本企業様向けの WeChat ミニプログラム開発なども進めていきたいです。
中国のお客様に一番伝えたいことは何でしょうか
大原:「中国でも、ビヨンドのMSP」ということで、ぜひビヨンドのサービスを使ってみていただきたいですね。
高城:ビヨンドは柔軟に行動、技術力があるエンジニアが多くいるので、中国でもサーバーやインフラのことを任せてもらえたら嬉しいです!
まとめ
以上、ビヨンドの中国オフィスのインタビューでした。
今回のインタビューを通して、以前はあまり具体的に想像できなかった中国に対するイメージが、実際に生の声を聴くことで少しずつ明確になってきたと感じます。もちろん今回の内容は、中国および必友得科技のほんの一部の内容ですので、今後さらに理解を深めていくためにも、様々な情報のキャッチアップを続けていきたいと思います。
中国オフィス、必友得科技の設立は、ビヨンドがこれから新しい未来を創っていく際に大きな影響を与えることに間違いありません。引き続き、ビヨンドの中国オフィス・必友得科技の動きにご注目ください。
ビヨンドおよび必友得科技では、中国に進出する日系企業様や現地法人のお客様向けに、クラウド / サーバー構築・運用の技術サポートをご提供しております。
中国の日系企業のお客様で、クラウド / サーバーやシステムのことでお困りごとがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
◆ Interviewer:小松 あさか(ビヨンド 広報)
会社概要
● 必友得科技(深圳)有限公司について( https://beyond-shenzhen.cn )
※ 英文表記:Beyond Technology Shenzhen Co., Ltd.
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董事長 :原岡 昌寛
総経理 :大原 裕也
本社所在地:広東省深圳市羅湖区和平路1085号 富臨大酒店5楼(創富港)
設立 :2023年8月31日
資本金 :2,000万円(日元)
事業内容 :クラウド / サーバー事業・システム開発事業・日中ITビジネスサポート
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● 主なサービス
◇ 中国クラウド / サーバー構築・運用保守
◇ WeChat ミニプログラム開発
◇ AWS 中国リージョン クラウド構築・運用保守・監視サービス
◇ 阿里云 クラウド構築・運用保守・監視サービス
◇ 中国SIMサービス「チョコSIM - powered by beyond -」
◇ 中国サイバーセキュリティ法 等級保護制度 認証サポート
◇ 日中間ITビジネスサポート