ITエンジニアがカナダで永住権を取得する方法
目次
ジョブオファーがない、日本での職歴しかない状態でカナダで永住権の申請はできるのか?取得できる可能性はあるのか?ITエンジニアなら一度は考える北米での就職、移住先としてカナダはどうなのか?考えてみました。
初めまして、カナダ歴8年、ビヨンド歴2ヶ月、カナダオフィスのTakuです。株式会社ビヨンドでは2022年6月よりカナダ研修制度がスタートして、日本のエンジニアの海外に対する見識を深める取り組みを行っております。今回は日本で働くエンジニアがカナダで永住権を取得する場合の一般的なルートをご紹介したいと思います。なお、永住権申請の状況やレギュレーションは刻一刻と変化しています。情報は2022年9月時点の情報となりますことご留意ください。
カナダの「永住権」とは?
まず、カナダにおける「永住権」とはどういうものか?軽く触れたいと思います。永住権=Permanent Resident(カナダでは略称の「PR」でよく呼ばれます) はカナダの移民局(IRCC)から発行され、カナダでの移住、就労やソーシャルサービス等をカナダ国民(市民権)と同様に受けられるステータスのことです。市民権との違いは主に選挙権がないことが挙げられます。永住権を維持するためには5年のうち730日をカナダで生活する必要があります。
カナダの永住権申請システム
さて、早速ですが「申請できるのか?永住権を取得できる可能性はあるのか?」という疑問に対しては、カナダの永住権申請システム上、申請できた時点で永住権取得は確定的です。
申請するためには(1)「Express Entry」というシステムに登録し、(2)カナダ移民局がチェックした上で、一定の基準を満たした人に対して (3)インビテーション(Invitation to Apply/ ITA)をもらう必要があります。ITAを受け取ったら(4)申請が可能となり、書類に不備がなければ永住権ゲットという流れになります。つまり、ITAがゴールでありITAをもらうまでにいくつかのハードルがある、といった具合です。
Express Entry
一般的にカナダで永住権を申請するためには「Express Entry」というシステムに登録する必要があります。これは、確かなスキルをもつ移民希望者が迅速に永住権を取得できるようにと2015年から始まったシステムで、登録者は登録時に入力した経歴からポイントがあたえられた「候補者」となり、一定のポイントを満たした候補者に対してITAが発行される仕組みとなっています。
日本に在住していて、カナダでの職歴がない状態でかつカナダの企業から採用ももらってない状態でExpress Entryに登録するには、Federal Skilled Workerというプログラムで登録する必要があります。Express Entryには3つのプログラムが用意されており、カナダでの職歴がある場合のCanadian Experience Classや、ジョブオファーがある特定の職業向けのFederal Skilled Trades Plogram がありますが、今回の「ジョブオファーなし、カナダでの職歴なし」という条件ですと、自動的にFederal Skilled Worker Programとなります。
Express Entry | Canadian Experience Class |
---|---|
Federal Skilled Worker Program ←コレ☆ | |
Federal Skilled Trades Program |
超えなくてはいけないハードル
Federal Skilled Worker 67点
Federal Skilled Worker ProgramでExpress Entryに登録するためには、学歴、職歴などをポイント化した基準で67点以上を取得する必要があります。ポイント計算は下記でできますので、興味のある方は確認してみてください。
Federal Skilled Worker Program Calculator
英語 CLB7
Federal Skilled Worker のポイント67点のうち、英語はCLB(Canadian Language Benchmarks)という基準で7以上を取得する必要があり、英語の得点が足りないとFederal Skilled Worker ProgramでのExpress Entry登録自体ができません。ちなみに、CLB7はIELTSで6.0点を取ることでクリアできます。
CLB Level | Test results for each ability | |||
---|---|---|---|---|
Listening | Reading | Writing | Speaking | |
10 and above | 8.5 – 9.0 | 8.0 – 9.0 | 7.5 – 9.0 | 7.5 – 9.0 |
9 | 8.0 | 7.0 | 7.0 | 7.0 |
8 | 7.5 | 6.5 | 6.5 | 6.5 |
7 | 6.0 | 6.0 | 6.0 | 6.0 |
CRSで 400-500点
さて、英語もCLB7をクリアし、67ポイントも取得できたところで無事Express EntryへFederal Skilled Worker Programで登録できました。ここで更に別のポイントシステムでインビテーション(ITA)が来るかどうかが決まります。CRS(Comprehensive Ranking System)というシステムで、Express Entry登録時の入力項目によってポイントが付与されます。要はこのポイントが高ければ高いほどITAを受け取りやすくなり、低ければ低いほど可能性は低く、また、1年の登録期限があるため、1年間ITAを受け取れなかった場合は再登録しなくてはいけません。CRSのポイントは、下記から計算できるので確認してみてください。
Comprehensive Ranking System (CRS) tool
何点取得できたでしょうか?CRSのポイントがどのような項目に高得点をつけているかを見れば、カナダがどのような人材に移民してきてほしいかを垣間見ることができます。例えば、20歳から29歳の独身者は110ポイント加算 vs 45歳以上は0点(!!!)、同様に大卒は120点 vs 高卒30点、等などです。過去の傾向から、400点あたりから可能性がでてきて、450点を超えたあたりからITAが来る可能性はグッと高くなります。ここで一つお伝えしたいのは、点数が低いからと言って諦めてはいけません。現在カナダは国を挙げて移民キャンペーンを実施していて、2024年まで毎年40万人以上の移民を受け入れる計画を発表しています。これに先立ち、昨年2021年にはExpress EntryのCanadian Experience Classですがポイント75以上にITAを出すという前代未聞の大盤振る舞いがありました。移民を積極的に受け入れたいカナダがまたいつポイントを大幅に下げてITAを送るかわかりません。カナダ移住に興味がある方は早いとこ英語の試験を受けてExpress Entryに登録していて損はありません。
カナダはどんな国か?
さて最後に、永住権を申請するからには当然カナダに住まなくてはいけません。どんな国なのか軽くでも知りたくなるのが人情というものですが、ちなみに私は何も知らずに来てしまいましたが、結果的に良い国で、めでたしめでたしという感じでした。時には思い切ることも人間必要です。カナダと言っても広大な国で一言では言い表せない上に、私の観測範囲だけでカナダを語ることは良くないので、一つ客観的なデータをお伝えしたいと思います。カナダ(トロント)は、
こういったランキングによく顔を出す、常連なんです。「ベストカントリー」だから最高か?と問われると「感じ方は人それぞれ」ですが、少なくとも実感としてここトロントでは治安の良さは感じます。日本の100円ショップや、日本食材もだいたい手に入りますので、日本人が暮らすにあたって不自由はほぼありません。ある程度の不便さを楽しめるようになるようなゆったりとした空気感があります。トロントやバンクーバーは世界的に有数なテックシティとしても知られており、エンジニアの雇用も増え続けているので今後ますます注目です。日本人エンジニアとして、カナダで挑戦してみませんか?